復刻2050号車が吉川八幡神社で公開へ
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※本記事は吉川八幡神社の監修を頂いて作成しています。
目次
前置き
2022年12月に運用を離脱し、
惜しまれつつも引退した能勢電鉄1754編成車。
阪急2000系時代のトップナンバー・2050号車(2代目)
だったこともあり、多くのファンが別れを惜しみました。
あれから1年半……
妙見口駅の先にある「吉川八幡神社」さんが、
能勢1552・阪急550に続いてこの『2050号車』の雄姿を
後世に残すべく、動き始めました。
阪急2050→能勢1754の来歴
(詳細は以下の車両紹介も参照)
【車両紹介】1700系 1754F(1754編成車)
- 1960年11月:阪急2050(初代)が竣工。主に神戸線で活躍。
- 1961年:阪急2154が竣工。主に宝塚線で活躍。
- 1985年:前年の六甲事故で2050(初代)が廃車となり、2154が2代目2050に改造編入。
- 1990年12月:能勢電鉄に譲渡。(阪急としては廃車)
- 1991年04月:能勢電鉄1754として再デビュー。
- 2022年12月12日:能勢電鉄のダイヤ改正で余剰となり運用離脱。
- 2023年01月31日:車体を2つに切断され、廃車陸送~解体。
- ???:運転台部分が解体業者から復刻作業を行う工場へと移送。
- 2024年06月23日:復刻作業カットボディが大阪市西淀川区千舟工場より吉川八幡神社へと陸送。
- 2024年07月07日:吉川八幡神社の七夕祭にて除幕式、公開予定。
復刻2050の概要
今回はかつての所属である阪急・能勢の固有名詞を用いず
『復刻2050』が正式名となっています。
(※鉄道企業の協力関係および1552・550形の保存からの御縁もあるため)
車体は腐食防止とアスベスト対策のため、
鋼製から強化グラスファイバー繊維樹脂製に換装。
再取付可能な部品は原形設計図面をもとにして可能な限り元の位置に再取付を実施。
これによって現役時代とほぼ同じビジュアルを取り戻し、
運行標識板やヘッドマークを往時と同じレイアウトで取り付けることも可能になっています。
また、詳細は後述しますが
『阪急時代の2050』『能勢電時代の1754』
いずれの顔も再現できるようになっています。
(1969年に引退した阪急550形の保存に際し、塗膜の劣化や錆による腐食に対する策として、)
単なるカットモデルの保存ではなく、
強化グラスファイバー繊維樹脂で鋼板を置き換えるなど
最新技術を用いたエンバーミング作業での復刻保存であり、
『復刻』というこれからの新たな鉄道車両保存の1つの形を提示しています。
復刻(reprint)
原本をそのまま再製すること.または再刊した図書等.
復刻(ふっこく)とは? 意味や使い方 – コトバンク より抜粋
本文の版面のみを正確に再現するだけでなく,原本の装丁や紙質まで再現することもある.
印刷物以外の記録媒体でも使われる.
※これらの経緯より、レプリカ(複製品)や
モックアップ(木型・テストショットのためのモデル)とは異なります。
神社からのライナーノーツ(解説)
【2050形 復刻プロジェクト】
復刻というものがどれだけ大変だったかは公開日のイベントなどでもご紹介があるかと思いますが、素材である1700形を基とし先ず部品類を全て取り外し、外装鋼板を強化グラスファイバー樹脂で置き換えアスベスト飛散の危惧を克服しています。
また、長期的な保存と維持管理が出来るようにマルーン色とクリアはラッカー系塗料ではなくウレタン系塗料を用いて全塗装を施しました。
台枠と鋼製躯体の残存に関しては、アスベスト飛散の恐れ、また、鋼製用カッターによる大掛かりな切断作業となり、腐食や断面の再処理などの課題もありました。
加えて、自重質量により設置の際、前後左右のバランスを保つことが大変難しく、この度は軽量化と腐食・劣化対策およびアスベストへの安全対策を第一に、最小限のリスクとなるよう復刻整備を取り行いました。
しかし膨大な量となる部品パーツを1700形より2000形への復刻となりますと、もとの正しい位置へ再度取り付け直すこととなりました。
これらは慎重に慎重をかさね時間だけでなく原形設計図面による割り出しに至る大変な復刻プロジェクトでありました。
企画:瀬戸朝一郎、担当:白井克樹 他スタッフの皆様
所有権等移転・輸送手配:芳村一実・三輪あきの
制作・所有:吉川八幡神社
<この部分は写真提供:吉川八幡神社>
※禁無断転載※(クリック・右クリックも不可)
吉川八幡神社への輸送
大阪市→神社敷地への輸送
2024年06月23日。梅雨の小雨の中、
大阪市西淀川区千舟工場から2tトラックに載せられた車体が
吉川八幡神社へ向けて出発しました。
2tトラックに載るという所で、強化グラスファイバー繊維樹脂化で
相当の軽量化が行われていることがうかがえます。
道中、「西宮車庫」および「川西能勢口駅」という、
この車両の経歴を語る上では欠かせないポイント2箇所を経由して移送されました。
輸送が行われることとおおよそのルートは
前日に神社や神職さん等のSNS上で告知され、
なるべく多くの鉄道ファンが見送りに来られるように計らわれました。
雨の影響でSNSで告知された時間からは約1時間遅れで、
西宮車庫や川西能勢口駅周辺を通過。
※筆者は西宮車庫の混雑を避けるため、その近くで見晴らしの良い若山町交差点で撮影。
また川西能勢口周辺では、鉄道ファン以外の知り合いの方々も巻き込んでお見送りできました。
筆者はうまく撮影できませんでしたが、
鴬の森駅付近では5148Fとの並走も実現。
妙見口駅前での一旦停車にも期待しましたが、
時間と天候の都合で妙見口駅前は経由せずに神社へと直行で運ばれていきました。
神社の敷地(参道)までは無事にたどり着いたものの、
境内への急な上り坂をトラックで上がるのは
雨の影響で危険と判断され、神社敷地に一度車体が降ろされることに。
ここから数日、神社の鳥居前にブルーシートをかけて安置されることに……
(非公開なのに見に来る野次馬達に心労がかかったとのことです……)
神社敷地→境内への移送
2024年06月29日、梅雨の晴れ間。
輸送を担当されていた神職さんから前日にお声掛け頂き、
神職さん2名と筆者の3人体制で神社の鳥居前から境内へと車体を運ぶ作業開始。
※前週の輸送を追いかけていた時の方が人数がいましたが、
その時は雨もさることながら夕暮れで既に暗くなっており
安全が確保できなくなっていました。
少人数でも車体を押したり牽引したりして運べるよう、
車体の四隅に仮の木製コロ付き台車4器をネジ止めして準備されていました。
台車を付けていても、
急な上り坂を数人程度で押して登るのは不可能。
そこで乗用車に紐を付けて牽引しながら後ろから人が車体の位置を調整する算段です。
境内に運び上げる前に、筆者の提案で
最初で最後になるかもしれない550・1552との
3車両(と御神馬)の並びもパシャリ。
神職さんが作業の無事を神々に祈り、いざ移送開始。
マンホールなどの段差を避けながら、
人力で少しずつ車両を押していきます。
(神社に偶然やってくる参拝者の応対もしながら……)
急な上り坂の手前まで運んだら、牽引する乗用車の出番です。
ロープを結わえ付けて、合図とともに引っ張り上げると……
バキィッ!!!
荒い路盤と傾斜、車体の重量に耐えられず、
1つまた1つと破壊されていく車体の仮接合木製部分。
その都度修理しては、
1~2メートルほど引っ張った所でまた1つ壊れ……
このままでは日が暮れてしまう……(夕方から雨予報)
というところで、先ほどの神々への祈りが届いたようです。
「大丈夫ですか?!」
と駆けつけてくれたのは、風情のありそうな神社に
たまたま寄り道されたというサイクリング中の青年。
名前も聞けなかった青年の全面協力のお陰もあり、
最後の方は長い木材を車体の下に滑り込ませて、
レールのようにして車で引っ張る(下から人力で押す)を
繰り返すことで、ようやく境内まで車体を引っ張り上げることができました。
(てこの原理で車体を持ち上げたり、気分はもう旧石器時代)
作業開始から約3時間。
神職さんによる写真撮影ののち、
(こんどは野次馬に剥がされないように)
再び柵とブルーシートがしっかりと巻かれました。
通りすがりのサイクリングのお方に重ねて御礼申し上げます。
(※同日、550と1552に溜まった汚れを落とすために洗車を行いました。)
今後の予定
今後は2024年7月7日(日) 11:00~
七夕祭として復刻2050号車のお披露目イベントが開催されます。
また、2024年7月15日(月祝) 11:00~
夏大祭・海祇祭(わだつみさい)で再び公開されます。
※2050公開に併せ550形・1552もフル点灯予定です。往年の看板も掲揚した撮影会を開催予定。
※神社につき授与品のお求め(1オーダー制)。10:45より撮影整理券の配布開始。
※7月15日は半熟BLOODさんライブ、露依楼囲-Roy Roy-さん出店もあり。
3度目の復活2050と1754の復活祭✨
— 吉川八幡神社 (@hachimanshrine) June 17, 2024
吉川八幡神社 七夕祭7/7(日)・海祇祭7/15(月)11:00〜に於いて2050形の公開と致します。
半熟BLOODさんライブ、露依楼囲-Roy Roy-も出展予定です。
皆様の御参拝お待ちしてます❗️
大阪府豊能町吉川936 吉川八幡神社
※瀬戸は取材応対のため7日は14時以降登場します。 https://t.co/HsUnwxQbbT pic.twitter.com/sGAyLXUUrv
神社からの告知メッセージ
※この部分は頂いた原文ママです※
「な!な!なんとですよ!1754の撮影会も予定してるかもですっ!」 とのことですが「えっ?2050形に復刻したのに、また1754に戻しちゃうの?」という疑問があるかもしれません。 この車体が「強化グラスファイバー繊維樹脂」で復元した理由があります。吉川八幡神社といえば能勢電鉄の妙見線 妙見口駅の氏神さん。ということで、能勢電鉄1754形への想い出もたくさんあるということで、 なんと、「標識灯」と「種別・行先表示幕」と「車両番号」が2050→1754にも復元できる仕様となっているのです。 どうやって???そこです。 「西部警察」や「あぶない刑事」などのワンシーンで覆面パトカーに赤色灯を取り付けるシーンを見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。吸盤などを用いていたこともありますが、現在では覆面パトカーの電動ギミックとして赤色灯の収納が可能となっています。 引退時の1754は左側の足掛けは撤去されている状態でした。しかし2050の復刻ということで足掛けも、ワイパーも運転席窓のみ復活していますので、引退時の1754と細部までは全く同じまでに再現はできませんが、「標識灯」と「種別・行先表示幕」と「車両番号」は復活可能なギミックとして遺構を残しています。 うわさによると7月7日(日)七夕祭では2050形を復刻、7月15日(祝)海祇祭”わだつみさい”では1754形に復刻され撮影会が催されるとか…。
関連リンク
- 吉川八幡神社
- 当サイト内記事
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